高齢者の口腔ケアはなぜ必要か|誤嚥性肺炎との関係

誤嚥性肺炎は、高齢の方の入院や生活機能の低下につながる病気です。誤嚥そのものを完全に防ぐことは難しくても、口の中の細菌を減らすことはできます。口腔ケアが必要とされる理由をご説明します。
この記事の要点
- 誤嚥性肺炎は唾液や食べ物が気管に入り、口の中の細菌が肺に達することで起こります
- 誤嚥は寝ている間にも起こります(不顕性誤嚥)。むせないから安心とは言えません
- 口腔ケアの目的は肺に届く細菌の量を減らすことです
- 歯がない方にも口腔ケアは必要です(舌・粘膜・入れ歯の清掃)
- 自宅では体位を起こして・少量ずつ・奥から手前へが基本です
誤嚥性肺炎が起こる仕組み
飲み込むとき、通常は気管の入り口が閉じ、食べ物や唾液は食道へ送られます。加齢や病気でこの働きが弱くなると、気管のほうへ入り込む(誤嚥する)ことがあります。
このとき、口の中の細菌が一緒に運ばれます。肺に達した細菌が炎症を起こしたものが誤嚥性肺炎です。
口腔ケアで何が変わるのか
誤嚥そのものを完全に止めることは困難です。しかし、誤嚥したときに一緒に運ばれる細菌の量は、口腔ケアで減らせます。
高齢の方、特に介護が必要な方では、次の理由で口の中の細菌が増えやすくなります。
- ご自身での歯みがきが難しくなる
- 唾液の量が減り、自浄作用が低下する(服用中のお薬の影響もあります)
- 入れ歯の内側に汚れが溜まる
- 舌の表面に舌苔がつきやすくなる
- 口が乾いて汚れが張りつく
厚生労働省 e-ヘルスネットでも、口腔ケアと誤嚥性肺炎の関連について情報が公開されています。
歯がない方にも口腔ケアは必要です
「歯が1本もないから、口の中のケアはいらない」と思われることがありますが、細菌は歯の表面だけにいるわけではありません。
- 舌 — 舌苔として細菌が付着します
- 頬の内側・上あご・歯ぐき — 粘膜にも汚れが付きます
- 入れ歯 — 内側と表面に細菌の膜(デンチャープラーク)ができます
入れ歯は毎日外して洗ってください。就寝時は外して、水または洗浄剤に浸けて保管します。
ご家族が自宅でできるケア
基本の姿勢
| ポイント | 理由 |
|---|---|
| 体を起こす(30度以上) | 寝たままだと、水分や汚れが気管に入りやすくなります |
| 顎を軽く引く | 顎が上がると気管が開きやすくなります |
| 水は少量ずつ | 一度に多いと誤嚥につながります。スポンジブラシで拭き取る方法もあります |
| 奥から手前へ | 汚れを喉のほうへ送らないためです |
| 短時間で複数回 | 一度に長く行うより負担が少なくなります |
用意するもの
- やわらかめの歯ブラシ(ヘッドが小さいもの)
- スポンジブラシ(粘膜と舌の清掃用)
- 保湿剤(口が乾いている場合)
- ガーグルベースン(受け皿)とタオル
こんなときは中止してご相談ください
- 強くむせる、呼吸が苦しそう
- 出血が続く
- 強く嫌がる、拒否が続く
- 発熱がある
- 口の中に白い苔状のもの、赤い腫れ、痛みがある
ご自宅でのケアが難しい場合や、お口の中の状態が気になる場合は、当院にご相談ください。清掃の手技や、ご家族が行う際の注意点をご案内できます。
よくあるご質問
- 高齢者の口腔ケアはなぜ必要ですか?
- 誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物が気管に入る際に口の中の細菌が一緒に肺へ運ばれて起こります。誤嚥そのものを完全に防ぐことは難しくても、口腔ケアによって肺に届く細菌の量を減らすことができます。
- 歯が1本もなくても口腔ケアは必要ですか?
- 必要です。細菌は歯の表面だけでなく、舌の表面(舌苔)、頬の内側や上あごの粘膜、入れ歯の内側にも付着します。入れ歯は毎日外して洗い、就寝時は水または洗浄剤に浸けて保管してください。
- 寝たきりの家族の口腔ケアで気をつけることは?
- 体を30度以上起こし、顎を軽く引いた姿勢で行ってください。水は少量ずつ使い、奥から手前へ汚れを送らないように清掃します。口が乾いているときは、先に保湿剤やスポンジブラシで湿らせてから行ってください。
出典
※ 本記事の掲載内容は一般的な情報です。症状や適応には個人差があり、実際の治療方針は診察のうえ判断いたします。費用は2026-09-01時点の税込金額です。
※ 点検日(2026-09-01)は、監修者が記事内容を点検した最新の日付です。内容に実質的な変更があった場合は最終更新日を更新します。
ご自宅でのケアの方法について、手技のご案内ができます。気になる点はお電話でご相談ください。
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